WCK Sessions Vol.9「コンテンツ設計から考えるUXデザイン基礎講座」レポート

2016年7月2日(土)高知市文化プラザかるぽーと 第3和室にて、WCK Sessions Vol.9「コンテンツ設計から考えるUXデザイン基礎講座」が開催されました。

3年ぶりの来高となる長谷川恭久さんをお迎えして行われた今回の勉強会。Webサイトにおけるコンテンツ設計のプロセスについて、レクチャとワークショップ形式でじっくりとUXデザインについて学びました。

---

小規模でもできるコンテンツ戦略


勉強会のはじめに、参加者一人ずつの自己紹介タイムがありました。
ここでひとつ、長谷川さんから「スマホの左下にあるアプリを教えて下さい」とのお題が。デフォルトの電話アプリを固定で使っている人、趣味に必須のアプリを置いている人、仕事の連絡ツールをまとめている人…と様々で、会話もはずみ、良いアイスブレイクとなりました。

良いコンテンツって何だろう?

レクチャではまず、とあるイベントの公式サイトを訪れて、「目的の情報を探す利用者」になる体験をしました。一見美しくデザインされ、整備されているように見えるサイトでも、いざ利用者の目線に立ってみると、目的の情報になかなかたどり着けないという現象に困惑の声が上がっていました。

コンテンツは十分すぎるほどあるのに、内容が重複したり、トピックスがサイトのあちこちに散らばって整合性や信頼性に欠けていたり、はたまた利用者が本当に求めている情報が掲載されていなかったり。配信者側が見せたい情報が、利用者にとっての「良いコンテンツ」とは限らないことを実感できました。
 


 

小さくても立派なユーザー調査


コンテンツ制作のゴールを共有するためには、調査に基づくユーザーの理解が不可欠です。しかし高知の中小規模の案件などでは、時間やコストがかけられない、調査の必要性が理解されないといった場面もしばしば見受けられます。

長谷川さんの「誰かと話すだけでも立派な調査」「現存データを活用して1〜2時間でできる調査もある」というお話は心強いものでした。また実際に今回のグループワークを通じて、メンバーの様々な視点や意見を交換することは、ユーザーの理解を深め、共有するのに非常に有効な手法であることも分かりました。

 

UXデザインから考えるコンテンツ設計

ワークショップでは高知県内の某施設のサイトを題材に、「誰が/どんな目的で/なぜそれを必要としているのか」という簡単なテンプレートに従って、利用者のユーザーストーリーを文章化しました。

個人ワークに続いて、グループで各自が書き出したユーザーストーリーを共有し、「Must/Should/Could」の3つの優先順位に分類しました。このとき、Must へピックアップするストーリーを3つに絞り込む過程で、職種や立場の異なるメンバー間で価値観や視点を共有できたことがとても新鮮で勉強になりました。
 

デザインではなくコンテンツにフォーカス

ワークの仕上げとして、優先度の高いユーザーストーリーから、現存コンテンツの改善策や新規コンテンツのアイデアを出し合いました。どのグループもリラックスした雰囲気で、活発な意見交換が行われていました。

ポイントは、デザインではなくコンテンツそのものを評価すること。イベント開催前にも「見た目重視のワークフローにありえる5つの課題」というトピックを長谷川さんから共有いただいていました。
デザイン先行の現場では見えにくくなってしまう部分にフォーカスすることで、発信側の目指すゴールと利用者のニーズに応えるコンテンツ=サイトのあるべき姿を考えられるということでした。
 

 

ユーザーストーリーからコンテンツを考える

最後にグループごとにディスカッションの成果を発表し、長谷川さんからの講評をいただきました。グループそれぞれに異なる発見と提案があり、発信者目線だけでは見えにくい「強み」をアピールするコンテンツ企画が挙がっていました。
 

今回は計130分にわたってワークを行いましたが、実際の案件では運用する上での実現可能性や持続可能性を踏まえて、さらに深堀りして具体的に考える必要があります。また、考えを進めるにつれ、既存コンテンツを整理しただけでは問題が解決するとは限らないことに気づくこともできました。

これまでのデザインプロセスでは後回しになりがちだったコンテンツ制作ですが、取り組んでみると意外と大変で、かつ重要性が高いということを実感できた方も多かったのではないでしょうか。
 

ユーザーの理解とコンテンツ改善の大切さ


今回のレクチャでは作業効率を上げるための様々なツールもご紹介いただきました。これからのデザインプロセスでは、制作時間を短縮することで、制作前のユーザー理解と制作後のサイト改善に多くの時間を割り当てることが必要になるとのことでした。

この勉強会を通して、「UX」という言葉を使わなくても、ユーザーを理解し、コンテンツを考えることはできることが分かりました。大掛かりな調査や詳細なカスタマージャーニーマップの作成はハードルが高いという現場でも、すぐに取り入れられそうなUXデザインのエッセンスがたくさん得られたと思います。
 

---

参加者へのプレゼント


参加者へのプレゼントとして、長谷川さんが前書きを担当された書籍をいただきました。
みんなではじめるデザイン批評―目的達成のためのコラボレーション&コミュニケーション改善ガイド

また、再来月開催のセミナーにご出演いただく岡山の前川昌幸さん執筆の最新書籍もプレゼントされました。
現場のプロが教えるWeb制作の最新常識[アップデート版]知らないと困るWebの新ルール

----

懇親会

WCK開催史上初の5時間超えとなったイベントでしたが、懇親会では長谷川さんを囲んで、まだまだ話題が尽きず大いに盛り上がりました。

ご参加いただいた皆さん、そして長谷川恭久さん、ありがとうございました!


---

《前夜祭》UX体験談座談会


今回のイベント前日には、高知市はりまや町の BarSalvador にて、長谷川恭久さんをモデレーターにお迎えした「UX体験談座談会」が行なわれました。

  • カスタマージャーニーマップって誰が考えるの?
  • 地方のデザイナーでもUXに関われる?
  • UXってどう見積もるの?
  • 災害に備えて、自治体サイトで考えるべきUXとは?
  • 情報のインプット方法は?
  • Webデザインに未来はある?

などなど、参加者からのざっくばらんな質問にその場でお答えいただきました。

参加者間でも、普段の業務で抱えている疑問や意見交換が盛んに行われ、会場は一夜限りの楽しく贅沢な UX Bar となりました。

会場と美味しいドリンク・おつまみをご提供いただいた BarSalvador さん、ありがとうございました。


WCK Sessions Vol.9 前夜祭 UX座談会

---

《番外編》Nextremer 高知AIラボ オフィス訪問


イベント翌日には、長谷川恭久さんと、高知大学講師の三好康夫先生、WCK実行委員で Nextremer 高知AIラボ オフィスを訪問しました。

高知大学理学部応用理学科情報科学コース 学習環境デザイン研究室(岡本・三好研究室)

株式会社 Nextremer

Nextremer さんが取り組まれている AIテクノロジー を活用した事業展開のお話、人工知能にまつわる長谷川さんからの質問、機械学習と教育学習との関連などなど、幅広く刺激的な話題に花が咲きました。
休日にも関わらず、快く迎えて下さった Nextremer の興梠さん、田嶋さん、村上さん、ありがとうございました!
 

---

おまけ

修学旅行生(?)に紛れて太平洋を望む長谷川恭久さん。また高知でお会いできる日を楽しみにしています。
イベント前日から3日間にわたり、本当にありがとうございました!


写真撮影:中野玄(HOOP Design)、上野洋平(notch


  • 前へ
  • indexへ
  • 次へ
UP