「これからのウェブ制作〜中小企業の限られた予算の中でも貢献できる制作手法〜」WCK Meeting vol.65 レポート

2018年10月20日(土)、よつばデザインの後藤賢司さんをお迎えして WCK Meeting vol.65 「これからのウェブ制作〜中小企業の限られた予算の中でも貢献できる制作手法〜」 が開催されました。

県外からも多数お申し込みをいただき、開催前から楽しみにされている声が多く聞かれた今回の勉強会。「デザインしないデザイナー」後藤さんが実践されている仕事術を惜しみなくお話いただき、参加者アンケートでも非常に満足度の高い回となりました。

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デザインしないデザイナー

まずはじめに、気になる肩書き「デザインしないデザイナー」の誕生エピソードをお話いただきました。

中小企業アドバイザーとして、とある木工会社からの相談を受けた後藤さん。これまでの方法では業績がふるわず、新サービスの家具リペアをアピールするためのチラシを作ることになりました。後藤さんは構成のアドバイスのみで、デザイン作業は社長の奥さまが手描き、配布はご近所に直接ポスティングされるという超アナログな手法で行われたそうです。
びっくりしながらも見守っていると、見事に黒字化!

このことから、デザイナーとして手を動かさなくても成果は出せることを実感されたそうです。


お客さんがデザインを発注するのは、素敵なものを作りたいからではなく、売り上げを上げたいから。成果が出なければ、価値を感じてもらえません。

制作者は「良いものを作りたい」と執着しがちですが、お客さんの立場から見た「良いデザイン」を考えることが、限られた予算を有効に使うためには必要なのだと気付かされました。

AI がやってくる! 第四次産業⾰命の影響と対応

次に、来たるIoTとAIの時代「第四次産業⾰命」がウェブ業界にもたらす変化についてお話いただきました。

自動レイアウトやコーディング、文章チェック、写真の選定など、テクノロジーの進化を取り入れたサービスが続々誕生しています。また、写真やアイコンなどの素材や高品質なテンプレート、サイトジェネレーターなど、全てゼロから作らなくても利用できるものが簡単に手に入るようになりました。

かつての版下職人の仕事がDTPの登場でなくなったように、ウェブ制作の世界も数年以内に激変するだろう、と後藤さん。
時代の流れとして、ウェブサイトの価値・役割が変化していることも見逃せません。スマートフォンの普及やアプリでの体験から、ユーザーは洗練されて使いやすいUIに慣れ親しんでいます。オリジナルでユニークな見た目のデザインよりも「良いコンテンツに速くアクセスしたい」というニーズが高まっていることも教えていただきました。

ただ「作れる」だけでは差がつかなくなりつつある時代。便利なツールやサービスとどう付き合い、制作者としてどんな価値をお客さんに提供すれば良いかを改めて問い直すことができました。

中小企業の限られた予算でも貢献できる制作手法

後半では、予算の限られた中小企業のウェブ制作で、何を削り、どこで価値を提供するかについてお話いただきました。


印象的だったのは、広告の費用対効果を表した「広告認知曲線」。後藤さんによれば、予算規模が小さな事業者ほど、かけた費用に対するリターンのインパクトは大きくなるそうです。この貴重な予算を有効に使うためにも、制作費の見積りの見直しが重要になります。

従来の制作手法で大きな割合を占めるのが「作ること」にかかる作業費用です。全てをゼロから作るのではなく、便利なツールや高品質な素材を活用することで、数週間かかっていた作業が数日でできるようになります。作業時間を減らすことで、大幅に予算を抑えることが可能になるとのことでした。

コードを書かないウェブ制作

昨今のウェブ制作には欠かせないCMSについても、WordPress を例にテーマやプラグインをご紹介いただきました。 WordPress はテーマディレクトリの無料テーマだけでなく、有料のものまで視野を広げれば、高機能なものがたくさん見つかるそうです。 また、Elementer や beaverbuilder などのページビルダー系プラグインを使うことで、これまでコードを触らないと難しかったレイアウトや実装が管理画面からできるようになります。ドラッグ&ドロップであっという間にページを作るデモには、驚きの声があがっていました。

ワイヤーフレーム、デザインカンプを作らないワークフロー

これまでの制作フローでは、ワイヤーフレームを作り、デザインカンプやプロトタイプを作って都度お客さんに確認をとりながら進めることが多いのではないでしょうか。しかしウェブの発注に不慣れな事業主さんの場合、中途成果物を見ても完成形がイメージできないこともしばしば。

そこで後藤さんが実践されているのが、はじめから WordPress にコンテンツを入れて作り込んでいく手法です。早い段階から完成形に近いものを見せることで、話がスムーズに進み、作業が減ってコンテンツ提案にかけられる時間が増えることを実例を交えてお話いただきました。

コミュニケーションにコストをかける

限られた予算の案件でも、後藤さんは必ず設計・ディレクション費用を入れているそうです。モノを作る作業者ではなく、知識やノウハウを活かした企画提案や問題解決をするプロになることで、機械化・自動化の波が来ても価値を提供できる存在であれるとのことでした。

仕事のキックオフ時に「今必要とされているウェブとは」が分かる資料を用いて前提知識を共有したり、最新の動向を把握してメリット・デメリットを示した上で自身の見解を伝えるなど、お客さんとの信頼関係を築くアプローチの数々も印象的でした。

 

絶対に効くコンテンツ施策

セッションの中では「絶対に効くコンテンツ」として、後藤さんが実践されている施策をご紹介いただきました。

  • 営業トークのようなプレゼンテーション型のコンテンツ設計
  • 利用者の問題を解決し、検索エンジンに評価されるFAQの作り方
  • 「業界の当たり前」で利用者の「知りたい」を満たすコンテンツ作り
  • 直感を刺激し、利用者との親密なコミュニケーションが図れる動画活用

中でも後藤さんが最近取り組まれている動画の活用方法には、興味を惹かれている方が多いようでした。作り込まれたプロモーションムービーとは異なるウェブ用の集客動画は、まだ専門家がいないブルーオーシャンだそう(後藤さんはその第一人者!)。スマートフォンのカメラでも始められるとのことで、挑戦してみたいという声も挙がっていました。
  


制作者としての意識改革

最後に、従来のものづくりの方法論に固執せず、時代の流れと現場のニーズに即したビジネスモデルの可能性を探っていく必要性についてお話いただきました。

「木こりのジレンマ」や「サンクコスト」など身につまされるワードと、常に最新の動向を読んで新しい手法を取り入れられている後藤さんのお話に、これからの制作のあり方を見つめ直した方が多かったようです。

3時間弱にわたるセッションと質疑応答で、書籍やネットにも載っていない、地方中小規模案件に関わるわたし達が今知りたいお話をたくさん伺うことができました。

写真撮影:上野洋平(notch

懇親会でも一人一人のお話に親身に耳を傾けてくださり、後藤さんを囲んで話題の尽きない回となりました。
ご参加いただいたみなさん、後藤賢司さん、ありがとうございました!

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ブログでご紹介いただきました

グラフィックレコーディングも盛りだくさんのレポートを書いていただきました!

こんな勉強会に行った」「ここが印象に残った」など、簡単なもので結構ですので、ブログやSNSで取り上げていただければ幸いです。ご連絡をいただければ、こちらのレポートページやフォローアップメールで紹介させていただきます。

ツイートまとめ

WCK Meeting Vol.65「これからのウェブ制作〜中小企業の限られた予算の中でも貢献できる制作手法〜」|togetter

開催前〜当日のツイートをまとめていただきました。


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